子役

歌舞伎には子役すなわち子供が舞台に登場する演目が数多くあります。そのセリフや仕草には大きな特徴があり、声は甲高く一本調子で動きも画一的、概して感情のこもった演技はしません。これは操り人形の動きを取り入れた演出といわれ、うれしい時は手を叩く、いやな時は首を振る、泣く時は手を交互に目の前にかざすなど言葉での表現を抑え、総じて大人の芝居の妨げになりません。例えば泣く場面で激しく嗚咽すれば舞台効果が上がると思われがちですが、歌舞伎では素朴な人形的な演技の方がむしろ可憐であると考えられ、「子別れ」などの場面でも、子供がメインで芝居をしているように見えて実は大人の役者の見せ場であることを決して忘れない、それが歌舞伎です。

甲高いセリフも個人差や男女差が出にくい特長をもち、幼く舞台経験のほとんどない子役でもベテランの歌舞伎俳優と同じ舞台を立派に勤めますが、そこにはこういった先人たちの知恵と工夫が生きています。子役として出演するのは歌舞伎俳優の子息とは限らず、現在は大半が一般の小学生・幼稚園生などですが、その都度専門のスタッフの指導を受けて見事にその役割を果たしています。