市川 高麗蔵 (11代目) イチカワ コマゾウ

屋号
高麗屋
定紋
四ツ花菱
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼女方。時代物・世話物を問わず、若女形から花車方までを巧みに演じ分けることのできる貴重な存在として活躍している。穏やかで品格ある『井伊大老』の昌子の方や毅然とした『俊寛』の東屋、凛々しい女武道の『寿曽我対面』の舞鶴、上方の風情を醸した『女殺油地獄』の芸者小菊、気風のいい江戸前の『神田祭』の芸者というように、確かな演技力と美しい容姿、日本舞踊の素養あふれる身のこなしで、あらゆる女方を幅広く好演。立役では『勧進帳』の四天王、『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』熊谷陣屋の堤軍次、『傾城反魂香』の土佐修理之助など。いずれの役にも、俳優自身の誠実な人柄がうかがわれ、親しみやすい人物像を作り出している。新作歌舞伎『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』では、市川染五郎演じる若い漂流民と恋に落ちる年増のロシア人女性・アグリッピーナを熱演。ロシア語を交えた情熱的でコミカルな演技で、ベテランならではの存在感を見せた。

〔小野幸恵〕

経歴

芸歴

▼1957年10月14日生まれ。日本舞踊の二代目花柳泰輔の長男。大伯父に八代目市川中車、初代市川猿翁がいる。62年6月東京宝塚劇場『義経千本桜』の安徳帝で初舞台。71年6月中車歿後、八代目松本幸四郎(初代白鸚)の部屋子となる。71年12月より市川百々丸(ももまる)を名のる。81年10・ 11月歌舞伎座『対面』の喜瀬川ほかで二代目市川新車を襲名。94年4月歌舞伎座『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』の山崎屋与五郎で十一代目市川高麗蔵を襲名。

受賞

▼1967年5月『佐倉義民傳』の宗吾長男彦七で、69年11月『椿説弓張月』の舜天丸冠者で国立劇場特別賞。77年6月『本朝廿四孝』の注進の侍で、90年10月『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』の花園姫で、98年11月『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の渡辺民部で、99年12月『義経千本桜』渡海屋・大物浦の入江丹蔵で、2000年11月『桜姫東文章』の葛飾のお十で国立劇場奨励賞。83年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。85年9月松竹社長賞。98年眞山青果賞助演賞。2008年7月『義経千本桜』四の切の静御前で、09年10月『京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)』の女隠密綾乃で、12年1月『三人吉三巴白浪』のおとせなどで国立劇場優秀賞。

舞台写真