中村 又蔵 (2代目) ナカムラ マタゾウ

本名
伊藤進
俳名・舞踊名
俳名は伊藤公貴、ペンネームは田口大蔵
屋号
播磨屋
定紋
揚羽蝶
生没年月日
昭和8(1933)年06月04日〜平成29(2017)年03月07日
出身
東京・品川区

プロフィール

 二代目中村又五郎一門の手強い古参だった。上智大学出身、大学の歌舞伎研究会華やかなりし頃、大谷ひと江のちの七代目嵐徳三郎とも交流があったという。苦み走った風貌、ひとくせありげな男といった役どころが光った。『八幡祭小望月賑(はちまんまつりよみやのにぎわい)』の赤間子分の海松杭(みるくい)の松、『毛谷村』の六助に嫌味を言う大坪軍平、『角力場』の平岡郷左衛門、『先代萩』の黒沢官蔵、『絵本合邦衢(えほんがっぽうがつじ)』の「水門口の場」に出てくる関口多九郎といった小悪党ぶり。だからといって苦みばかりではなく、師匠譲りの芸達者だから、二代目中村吉右衛門が茂兵衛を演じた『一本刀』の清大工のサラリとした老巧ぶりも印象深い。布施川のしみじみとした旅情と日常、初代松本幸右衛門の老船頭とのなにげないやりとりはさすがにベテランの年輪。東宝時代は帝劇の山田五十鈴「日本美女絵巻シリーズ」の常連で脇を固めた。英語が堪能、師の海外公演などでは右腕として大いに貢献した。御園座出演時は館内の演劇図書館でよく資料を調べていたという学究肌で英文はじめ、歌舞伎の著書が2冊もある。

【秋山勝彦】

経歴

芸歴

鳶職の家に生まれ、上智大学卒業後、昭和37年八代目坂東三津五郎に師事。同年6月東京宝塚劇場『義経千本桜』の軍兵で伊藤公貴の名で初舞台。二代目中村又五郎門下となり、昭和42年5月国立劇場『佐倉義民傳』の諸士奥山ほかで中村又蔵を襲名し名題昇進。昭和56年3月伝統歌舞伎保存会会員の第6次認定を受ける。 平成23年9月現・中村又五郎一門となる。

受賞

昭和37年度「江戸の娯楽と祭囃子」の「木遣り」で第17回レコード部門芸術祭奨励賞。54年『子午線の祀り』の梶原景時で第21回毎日演劇賞団体賞。平成5年歌舞伎を海外に紹介した功績に対し上智大学コムソフィア賞。

著書・参考資料

昭和63年『知らざぁ言って聞かせやしょう―歌舞伎界でんがく返し』(中村又蔵著、日本テレビ放送網)、平成元年『花道六方やぶにらみ―マタやんの、肩のこらない「歌舞伎」入門』(中村又蔵著、日本テレビ放送網)、平成8年『歌舞伎通になる本 はじめての人からマニアまで役者が書いた観どころ知りどころ』(田口大蔵・葛田一雄著、オーエス出版)

舞台写真

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