片岡 市蔵 (6代目) カタオカ イチゾウ

屋号
松島屋
定紋
銀杏丸
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼いい役者になる条件は色々とある。本を読むこともその1つ。この優は常に読書を忘れず、この役、この場面を劇化すればと思考法が具体的。そんな心構えだから、舞台が面白くないわけがない。加えて、初見の客も満足させるその風貌、台詞回し、扮装だ。2019(令和元)年も市川海老蔵の舞台の最右翼を受け持った。『俊寛』の敵役の瀬尾、『極付幡随長兵衛』の劇中劇「公平法問諍(きんぴらほうもんあらそい)」の坂田公平、『勧進帳』の常陸坊海尊と、父の五代目市蔵の芸を踏まえ、今日的な感覚も融合させて演じた。陰翳の深い役も得意分野。7月の海老蔵の『星合世十三團』の、源平の共倒れを謀る公家の家来・猪熊大之進は悪人とも忠義の臣とも取れる難役だ。『鰯賣戀曳網』の傾城蛍火実はお城の姫の様子を探る、庭男実は藪熊次郎太といい、解釈できぬ奇怪な役を“らしく”見せる。腕があるから舞台出演は絶えないが、父と十一代目市川團十郎以来の関係を保ち、成田屋の芝居を支える存在だ。

〔朝田富次〕

経歴

芸歴

▼1958年12月12日生まれ。五代目片岡市蔵の長男。62年4月歌舞伎座『助六由縁江戸桜』の禿(かむろ)で片岡幸一を名のり初舞台。69年11月歌舞伎座『助六由縁江戸桜』の茶屋廻り金太ほかで六代目片岡十蔵を襲名。85年名題昇進。2003年5月歌舞伎座『実盛物語』の瀬尾十郎ほかで六代目片岡市蔵を襲名。

受賞

▼1972年4月『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』須磨浦組討の遠見の熊谷で、83年11月『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』三笠山御殿の官女梅の局で、93年4月『浮世柄比翼稲妻』の雲助品川の鮒蔵などで、2009年1月『象引』の堀河勘解由などで国立劇場奨励賞。89年関西で歌舞伎を育てる会奨励賞。90年眞山青果賞助演賞。同年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。95年第一回日本俳優協会賞奨励賞。97年歌舞伎座賞。2008年6月『神霊矢口渡』の渡し守頓兵衛で、09年11月『外郎売』の茶道珍斎などで国立劇場優秀賞。

舞台写真