松本 幸四郎 (10代目) マツモト コウシロウ
- 屋号
- 高麗屋
- 定紋
- 浮線蝶、四ツ花菱
- 所属
- 伝統歌舞伎保存会会員
プロフィール
▼立役。端正な容姿と確かな演技力の花のある実力派。曽祖父・七代目松本幸四郎が生涯1600回以上勤めた『勧進帳』の弁慶、五代目幸四郎以来の高麗屋の当たり役『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の仁木弾正といった大役はもとより、もう1人の曽祖父・初代中村吉右衛門が得意とした『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』の大蔵卿、『熊谷陣屋』の熊谷直実でも実力を発揮。上方の『女殺油地獄』の与兵衛、『廓文章』の伊左衛門も巧みにこなす。復活物や新作にも熱心で、復活物では七代目幸四郎の襲名狂言『碁盤忠信』など意欲的に取り組む。新作では、18歳で葉叢丸と実刈屋姫の2役を演じた『葉武烈土倭錦絵(ハムレットヤマトニシキエ)』をはじめ、『決闘!高田馬場』の安兵衛、『陰陽師』の晴明、『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)』の大黒屋光太夫など画期的な作品に主演。少年時代から構想していた物語を劇団☆新感線で『アテルイ』として実現し、2015(平成27)年に歌舞伎NEXT『阿弖流為(アテルイ)』の上演を果たした。『鯉つかみ』『獅子王』のラスベガス公演、フィギュアスケートと競演した『氷艶』など、活躍は止まるところを知らない。
〔小野幸恵〕
経歴
芸歴
▼1973年1月8日生まれ。松本白鸚の長男。79年3月歌舞伎座『侠客春雨傘』で三代目松本金太郎を名のり初舞台。81年10・11月、歌舞伎座『忠臣蔵』七段目の大星力弥ほかで七代目市川染五郎を襲名。94年4月歌舞伎座にて名題昇進。2018年1・2月歌舞伎座で十代目松本幸四郎を襲名。舞踊の松本流家元を兼ねる。
受賞
▼1987年4月歌舞伎座『大石最後の一日』の内記利章で第六回眞山青果賞新人賞。89年10月『熊野』の侍女若葉、『傾城反魂香』の修理之助で、95年11月『八幡祭小望月賑(はちまんまつりよみやのにぎわい)』の荷持佐助で国立劇場賞奨励賞。90年2月歌舞伎座『京人形』の京人形の精で、95年10月サンシャイン劇場『アマデウス』のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトで松竹会長賞。93年3月歌舞伎座『おちくぼ物語』の帯刀、『寺子屋』の園生の前、『河内山』の波路で、96年6月歌舞伎座『松寿操り三番叟』の三番叟で歌舞伎座賞。96年3月第十七回松尾芸能賞新人賞。96年12月歌舞伎座『将軍頼家』の畠山六郎重保で第十六回眞山青果賞奨励賞。98年1月『帯取池』の左馬之助で国立劇場賞特別賞。99年4-5月PARCO劇場『マトリョ−シカ』の青年で第34回紀伊国屋演劇賞。2001年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。03年1月『アテルイ』(2002年8月新橋演舞場)で第二回朝日舞台芸術賞秋元松代賞(作品賞)。03年3月『アテルイ』『霊験亀山鉾』(02年10月国立劇場)で02年度芸術選奨文部科学大臣新人賞(演劇部門)。05年12月『阿修羅城の瞳』『蝉しぐれ』で第30回報知映画賞最優秀主演男優賞。05年12月『阿修羅城の瞳』『蝉しぐれ』で第18回日刊スポーツ映画大賞主演男優賞。06年3月『蝉しぐれ』で第29回日本アカデミー賞優秀主演男優賞。06年6月『蝉しぐれ』で第15回日本映画批評家大賞主演男優賞。10年10月『天保遊侠録』の松坂庄之助、『将軍江戸を去る』の山岡鉄太郎で、13年10月『一谷嫩軍記』陣門・組討の熊谷小次郎直家・無官太夫敦盛、『春興鏡獅子』小姓弥生・獅子の精で国立劇場賞優秀賞。15年度第三十二回浅草芸能大賞奨励賞。19年度日本芸術院賞。21年日本クリエイション大賞2020伝統文化革新賞。
著書・参考資料
▼監修(小野幸恵著)『染五郎と読む 歌舞伎になった義経物語』(2006年、岩崎書店)、監修(君野倫子著)『歌舞伎のかわいい衣裳図鑑』(08年、小学館)、著書『歌舞伎のチカラ』(10年、集英社)、著書『染五郎の超訳的歌舞伎』(13年、小学館)、監修(君野倫子著)『バイリンガルで楽しむ 歌舞伎図鑑』(16年、小学館)、監修(小野幸惠著)『新版 日本の伝統芸能はおもしろい 市川染五郎と歌舞伎を観よう』(15年、岩崎書店)、著書『人生いろいろ染模様』(15年、世界文化社)、写真集(野村佐紀子著)『残夢』(18年、AKIO NAGASAWA GALLERY)、著書『高麗屋の逸品』(18年、角川書店)、鈴木英一著『十代目松本幸四郎への軌跡 七代目市川染五郎物語』(18年、演劇出版社)
舞台写真
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