澤村 田之助 (6代目) サワムラ タノスケ

屋号
紀伊国屋
定紋
釻菊、波に千鳥
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼江戸和事を伝える紀伊国屋の古風な女方芸を見せてくれる貴重な存在だ。襲名で演じた『矢口渡』のお舟は今日もお手本として継承されている。子役時代に接した六代目尾上菊五郎や初代中村吉右衛門らの芸を心に映し、青年期以降に七代目尾上梅幸や六代目中村歌右衛門ら女方の至宝に薫陶を受けた娘やお姫様、武家女房の片はずし役などは大歌舞伎ならではの芸格で舞台を彩る。当代菊五郎の『魚屋宗五郎』のおはまなど、市井の女房役にも何とも言えない味わいがあった。近年は『直侍』の丈賀など脇の立役も手掛けてきたが、体調を崩し2014(平成26)年5月歌舞伎座『矢の根』の曽我十郎以来、舞台から遠ざかっているのは誠に惜しまれる。歌舞伎界の生き字引的存在。長く国立劇場歌舞伎研修の主任講師として後進の指導に尽力した。好角家としても知られ、大横綱・双葉山が70連勝ならずに敗れた大一番を六代目菊五郎の膝上で見たのがご自慢。横綱審議会委員も務めた。

〔森 洋三〕

経歴

芸歴

▼1932年8月4日生まれ。五代目澤村田之助(初代曙山【しょざん】)の長男。41年3月歌舞伎座『先代萩』の鶴千代ほかで四代目澤村由次郎を名のり初舞台。64年4月歌舞伎座『矢口渡』のお舟ほかで六代目澤村田之助を襲名。

受賞

▼1954年4月演劇界賞。62年大阪市民芸術祭賞。65年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。65年度第十一回テアトロン賞。78年十三夜会賞奨励賞。同年7月『義経千本桜』すし屋の弥助実は平維盛で、同年9月『梅の由兵衛』の女房小梅で、87年3月『四千両小判梅葉』の女房おさよで、88年3月『女清玄』の綱女で国立劇場優秀賞。87年6月、89年5月、91年1月松竹社長賞。89年名古屋演劇ペンクラブ年間賞。93年4月松竹会長賞。96年度芸術選奨文部大臣賞。97年紫綬褒章。99年10月国立劇場特別賞。2000年第二十一回松尾芸能賞特別賞。2000年度日本芸術院賞。02年重要無形文化財保持者(人間国宝)。13年旭日小綬章。

著書・参考資料

▼著書『澤村田之助むかし語り~回想の昭和歌舞伎~』(2011年、雄山閣)

舞台写真