市川 團蔵 (9代目) イチカワ ダンゾウ

屋号
三河屋
定紋
縦長三升、結び柏
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼畏敬する師がいることは何よりも大切だ。自分を見る目があると意識すれば、変なことはできない。二代目尾上松緑を今も「うちの師匠」と呼ぶ。敬慕の念は、同志的な思いも加わり、師匠の長男の初代尾上辰之助(三代目松緑を追贈)に及ぶ。親子から芝居の多くを学んだ。いよいよ深まる恩義の念は最近の芝居にも表れ、尾上菊五郎の『野晒悟助』での男伊達の六字南無右衛門も、『権三と助十』の飄々とした家主六郎兵衛も、「うちの師匠」が客席にいる、そんな心境が見て取れた。菊五郎劇団の重鎮であり、劇団以外の芝居でも、先人を敬う生き方も含め、後輩の指針となる存在だ。祖父の八代目團蔵の名を守ってきた。家の型で『馬盥(ばだらい)』の光秀を演じ、最近も『菊畑』の鬼一法眼をし、感慨ひとしおの態だった。舞台生活八十二年引退披露と銘打った八代目の最後の舞台は、鬼一法眼と十七代目中村勘三郎の『助六曲輪菊(すけろくくるわのももよぐさ)』の髭の意休。当代の意休も遠くない。

〔朝田富次〕

経歴

芸歴

▼1951年5月29日生まれ。祖父は八代目市川團蔵。56年5月歌舞伎座『義経千本桜』の六代君で市川銀之助を名のり初舞台。二代目尾上松緑のもとに預けられ、81年4月名題試験に合格。87年5月歌舞伎座『馬盥』の光秀ほかで九代目市川團蔵を襲名。日本舞踊柏木流十代目宗家も兼ねる。

受賞

▼1971年1月『め組の喧嘩』の大童山文太郎で、79年12月『ひらかな盛衰記』の横須賀軍内と船頭富蔵で、85年1月『関羽』の伴沢六郎で国立劇場奨励賞。79年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。94年10月『男達ばやり』の茶屋亭主又兵衛で、2015年3月『髪結新三』の家主長兵衛で国立劇場優秀賞。00年眞山青果賞奨励賞。11年1月『四天王御江戸鏑』の演出助手で国立劇場特別賞。

舞台写真