▼父・十三代目片岡仁左衛門のもとで舞踊、義太夫、鳴物など歌舞伎役者の基礎を学び、義太夫狂言、上方狂言の台詞回し、演技、芝居の運びを身に付けた。長じては坂田藤十郎の相手役として『河庄』の小春、『封印切』の梅川、『忠臣蔵』のおかる、『沼津』のお米など数々の古典の立女形（たておやま）の役を演じてきた。近年は『吉田屋』のおきさ、『封印切』のおえんなど花車方の役を演じることが多いが、役の性根と格を演じ分け、出てきただけで上方の花街の匂いを漂わせる。また『国姓爺合戦』の渚、『盛綱陣屋』の微妙（みみょう）、『輝虎配膳』の越路など時代物の老女役では風格を示す。一方で江戸の世話狂言や新歌舞伎にも当たり役を持っている。ずっと大阪に住んで上方の歌舞伎の振興に力を注ぎ、「関西歌舞伎中之芝居」という上方狂言の復活公演を続け、1997（平成9）年に開塾した「上方歌舞伎塾」では指導者として後進の育成に努め「平成若衆歌舞伎」という若手公演を立ち上げた。

〔水落 潔〕

写真をクリックすると拡大画像をご覧いただけます

• 

  『菅原伝授手習鑑』道明寺　菅丞相伯母覚寿

• 

  『加賀鳶』女按摩お兼

• 

  『伊勢音頭恋寝刃』今田万次郎

• 

  『吉例寿曽我』工藤奥方梛の葉

• 

  『人情噺文七元結』角海老女房お駒

• 

  『雙生隅田川』

• 『仮名手本忠臣蔵』九段目
• 『仮名手本忠臣蔵』九段目