尾上 芙雀 (10代目) オノエ フジャク
- 本名
- 笠原興一
- 屋号
- 音羽屋
- 定紋
- 三つ追い扇
- 生没年月日
- 大正13(1924)年01月15日〜平成10(1998)年03月01日
- 出身
- 群馬県
プロフィール
大柄でふくよかな女形で、並びの腰元などでも一際仁(にん)が良く、目立った。八代目市川團蔵門下の頃、七代目尾上梅幸に芙雀襲名をすすめられて一門に入った幸運の持ち主。芙雀といえば六代目尾上菊五郎の相手役だった名女形・三代目尾上菊次郎の前名である。師の期待がわかる。綺麗で嫌味のない芸風だが、おっとりとした性格なのか、この役はこの人という強烈な個性ではなく、役柄ですぐ浮かぶのは『紅葉狩』の侍女の行儀のよさや『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』の千代春の胴抜きの衣裳の風情、また『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の繁山栄之丞浪宅の雇婆に扮しても「私ももう少し若けりゃぁ、鴬なかそうもの……」というせりふに実感のある容姿であった。
【小宮暁子】
経歴
芸歴
昭和17年日吉良太郎劇団に入団、昭和18年横浜歌舞伎座で初舞台を踏むが1年程で退団。昭和22年三代目市川門三郎(三代目白蔵)一座に入座、市川芳次郎を名乗る。昭和24 年5月八代目市川團蔵の門下となる。昭和26年9月歌舞伎座『銀杏鶴玉章封裏−雁のたより』の娘お君で三代目市川おの江を襲名、名題昇進。昭和40年5月歌舞伎座『魚屋宗五郎』の茶屋の娘おしげで十代目尾上芙雀を襲名。昭和47年5月伝統歌舞伎保存会会員の第2次認定を受ける。
受賞
平成2年10月『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』の奥女中宮越で国立劇場奨励賞。没後平成10年第4回日本俳優協会賞特別賞を追贈。