市川 升雀 (初代) イチカワ マスジャク

本名
巻口徳二郎
屋号
成田屋
定紋
源氏輪葉牡丹
生没年月日
明治45(1912)年04月11日〜昭和51(1976)年11月
出身
東京・赤坂

プロフィール

松本高麗雀(こまじゃく)時代が長かったから、一般にはその名が馴染み深かった筈である。昭和23年10月、三越劇場で九代目市川海老蔵(十一代目團十郎)が『盛綱陣屋』を初役で演じたとき、早瀬の役に起用され、七代目大谷友右衛門(四代目中村雀右衛門)の篝火に拮抗したこともあった。

師七代目松本幸四郎没後も海老蔵に従って、自然菊五郎劇団と行動を共にするようになっている。飄逸な味があるので、『朝顔日記』の宿屋の下女など、三枚目風の女役に向いていた。生まれつきか首をかしげる気味があったので、『忠臣蔵』四段目の並び腰元に出ていたとき、劇評家の安藤鶴夫に「『判官様の切腹に異議があります』と言っているみたいだ」と批評され、当人憤慨していたことがある。

素顔は髭が濃くて、度の強い眼鏡をかけ、頭髪の薄いのを気にしてか、楽屋では浴衣着なのに、終始黒毛糸のキャップをかぶっていた。そんな風采でいながら、口をきくと全くの女形口調だったから、初めて会う人はおどろいたものである。

【松井俊諭】

経歴

芸歴

七代目松本幸四郎の門に入り、大正7年6月帝国劇場『石切梶原』の小姓で初舞台。昭和5年4月歌舞伎座『極付幡随長兵衛』劇中劇の柏の前で前名松本錦二郎から松本高麗雀と改め名題昇進。昭和36年3月九代目市川海老蔵(十一代目團十郎)門下に移り、歌舞伎座『引窓』の在所の娘おとくで市川升雀と改名。

舞台写真

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