中村 又五郎 (3代目) ナカムラ マタゴロウ

屋号
播磨屋
定紋
揚羽蝶、つるかたばみ
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼口跡に優れ、きびきびとした動きとせりふで舞台を引き締める。立役として兄・中村歌六とともに播磨屋一門の要を担っている。中村光輝(みつてる)を名乗った子役時代にはテレビの大河ドラマや映画の時代劇などに出演して人気を博す一方、勉強会の「杉の子会」では亡き十八代目中村勘三郎ら同世代の少年たちと切磋琢磨した。中村歌昇襲名後は歌舞伎に専念、『石切』の俣野など赤っ面の荒若衆や『角力場』の放駒、『菅原』の梅王丸など血気盛んな役柄に本領を発揮。『義経千本桜』渡海屋の相模五郎や『盛綱陣屋』の信楽太郎、『助六』の朝顔仙平など注進役や三枚目もうまい。又五郎襲名後は『石切』の大庭、『忠臣蔵』七段目の平右衛門などの大役を勤めるようになり、役者ぶりも上がった。時代物から世話物まで役柄は幅広く、所作事にも優れている。研究熱心で若手の良きお手本。同世代の立役が手薄になった今、2人の息子や一門の若手らを指導しながら、一層の精進と飛躍が期待される。

〔石山俊彦〕

経歴

芸歴

▼1956年4月26日生まれ。四代目中村歌六の次男。祖父は三代目中村時蔵。兄は中村歌六、いとこに中村時蔵、中村錦之助、中村獅童がいる。64年7月歌舞伎座『偲草姿錦絵』の『忠臣蔵』八段目の奴ほかで中村光輝を名のり初舞台。81年名題適任証を受ける。同年6月歌舞伎座『船弁慶』の静御前・知盛の霊などで三代目中村歌昇を襲名。2011年9月新橋演舞場『菅原伝授手習鑑』寺子屋の武部源蔵、『菅原伝授手習鑑』車引の梅王丸などで三代目中村又五郎を襲名。

受賞

▼1966年7月松竹会長賞。70年2月テレビ大賞、タレント新人賞。同年11月京都市民映画祭特別演技賞。81年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。90年と98年に眞山青果賞奨励賞。91年3月松竹社長賞。92年12月『廓文章』の吉田屋喜左衛門などで国立劇場奨励賞。95年10月『平家女護嶋』の有王丸で、2001年1月『奥州安達原』の外ヶ浜の南兵衛実は安倍宗任で、同年10月『天下茶屋聚(てんがぢゃやむら)』の安達弥助と京屋萬助で、08年10月『大老』の古関次之介で、09年12月『頼朝の死』の畠山重保で、10年10月『将軍江戸を去る』の西郷吉之助で、12年12月『鬼一法眼三略巻』の智恵内実は吉岡鬼三太で、16年11月『仮名手本忠臣蔵』七段目の寺岡平右衛門で、17年3月『伊賀越道中双六』の佐々木丹右衛門と奴助平で、同年12月『梅の由兵衛(うめのよしべえ)』の土手のどび六実ハ十平次で国立劇場優秀賞。1998年名古屋演劇ペンクラブ奨励賞。2012年芸術選奨文部科学大臣賞。14年紫綬褒章。

舞台写真