中村 吉右衛門 (2代目) ナカムラ キチエモン

屋号
播磨屋
定紋
揚羽蝶、村山片喰
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼現代の歌舞伎界を代表する立役のひとり。卓越した台詞術と表現力を持つ。当たり役は多く、義太夫物の『熊谷陣屋』の熊谷直実、『俊寛』の俊寛、『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』の大蔵卿、『夏祭浪花鑑』の団七、『寺子屋』の松王丸、『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助などでは主人公の内面を掘り下げ、世話物の『法界坊』『河内山』『極付幡随長兵衛』では江戸の市井に生きる人物を活写。また『勧進帳』の弁慶では豪快さと繊細さの両面を描き出す。明治から昭和にかけての屈指の名優、養父・初代吉右衛門の芸境を目指し、初代の得意とした『伊賀越道中双六』の「岡崎」、『神霊矢口渡』の「由良兵庫之助新邸」、『隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)』や『増補双級巴(ぞうほふたつどもえ)』の上演が稀な場面を復活するなど挑戦も続けている。先祖にちなんだ松貫四の名で創作・脚色も行い、古典に題材を得た『再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)』『日向嶋景清(ひにむかうしまのかげきよ)』、能に着想した『昇龍愛別瀬戸内(のぼるりゅうわかれのせとうち)』藤戸『巴』、狂言がもとの『閻魔と政頼(えんまとせいらい)』を発表。

〔小玉祥子〕

経歴

芸歴

▼1944年5月22日生まれ。八代目松本幸四郎(初代白鸚)の次男。祖父の初代中村吉右衛門の養子となる。48年6月東京劇場『俎板長兵衛』の長松ほかで中村萬之助を名のり初舞台。66年10月帝国劇場『金閣寺』の此下東吉ほかで二代目中村吉右衛門を襲名。

受賞

▼1955年第8回毎日演劇賞演技特別賞。72年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。75年10月名古屋顔見世での演技に対して名古屋演劇ペンクラブ年間賞。77年度芸術選奨文部大臣新人賞。78年11月『元禄忠臣蔵』の多門伝八郎と井関徳兵衛で、79年8月『勧善懲悪覗機関(かんぜんちょうあくのぞきからくり)』の村井長庵と紙屑買久八で国立劇場優秀賞。84年と95年に眞山青果賞大賞を2回受賞。84年度日本芸術院賞。84年11月歌舞伎座『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』引窓の南与兵衛後に南方十次兵衛で歌舞伎座優秀賞。88年3月歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』の高師直と大星由良之助で松竹社長賞。91年第十二回松尾芸能賞大賞。91年4月歌舞伎座『法界坊』の法界坊ほかで、同年9月歌舞伎座『かさね』の与右衛門ほかで松竹社長賞。93年フジテレビ社長賞。96年第三回読売演劇大賞優秀男優賞。同年第十九回日本アカデミー賞優秀主演男優賞。同年11月歌舞伎座『俊寛』の俊寛で松竹会長賞。99年度第九回日本映画批評家大賞ゴールデン・グローリー賞。2002年度芸術祭賞演劇部門大賞。同年日本芸術院会員。03年第十回読売演劇大賞選考委員特別賞。06年度第四十八回毎日芸術賞。06年第6回朝日舞台芸術賞。07年第十四回読売演劇大賞優秀男優賞08年第十二回坪内逍遙大賞。同年第二十八回伝統文化ポーラ賞大賞。09年第十六回読売演劇大賞選考委員特別賞。11年重要無形文化財(人間国宝)。14年度第三十一回浅草芸能大賞。16年第三十一回早稲田大学芸術功労者表彰。17年文化功労者。

著書・参考資料

▼写真集(稲越功一写真、田中一光構成)『中村吉右衛門』(1992年、用美社)、著書『半ズボンをはいた播磨屋』(93年、淡交社、2000年PHP文庫から復刊)、著書(伊達なつめ構成)『物語り』(96年、マガジンハウス)、監修『中村吉右衛門の歌舞伎ワールド』(98年、小学館)、著書(阿川佐和子著、稲越功一写真)『吉右衛門のパレット』(2000年、新潮社)、写真集(稲越功一写真)『播磨屋一九九二~二〇〇四 中村吉右衛門』(04年、求龍堂)、小玉祥子著『二代目 聞き書き 中村吉右衛門』(09年、毎日新聞社、 16年に朝日文庫から出版)、写真集(鍋島徳恭記録)『歌舞伎俳優 二代目 中村吉右衛門』(18年、小学館)。松貫四の名で『再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)』『日向嶋景清』『閻魔と政頼』などの脚本も執筆。

舞台写真