中村 亀鶴 (2代目) ナカムラ キカク
- 屋号
- 八幡屋
- 定紋
- 向い亀鶴菱
- 所属
- 伝統歌舞伎保存会会員
プロフィール
▼役どころの幅広さと翳りある人物造形が光る実力派。二枚目から三枚目、敵役や女方までこなし、上方狂言でも江戸の作品世界でも、役としていきいきと呼吸する。たびたび演じてきた『曽根崎心中』の油屋九平次では、男の色気や鋭さを描写。お初をずっと目で追いかけ、彼女への執着心も浮かび上がらせる。『河庄』の善六に軽妙なおかしみを滲ませ、『雁のたより』の左司馬では、どこか憎めない鷹揚で傲慢な若殿ぶり。『幸助餅』の雷五良吉で、情に厚い関取の心情を鮮明に描き出したのも印象的だ。上方の香りを放つ一方で、『白浪五人男』の忠信利平・鳶頭清次、『魚屋宗五郎』の三吉といった役では、江戸の風情を醸し出す。大きな強みといえるだろう。『実盛物語』の瀬尾を骨太かつ情感豊かに力演し、今後この人の役になるのではないかと思わせた。『毛抜』の八剣玄蕃の憎々しさ、『連獅子』の僧蓮念での飄々とした味も印象深い。踊りも達者で、多彩な活躍を続けている。
〔坂東亜矢子〕
経歴
芸歴
▼1972年6月18日生まれ。初代中村亀鶴の長男。父方の祖父は四代目中村富十郎、祖母は初代中村鴈治郎の娘の中村芳子(よしこ)。76年12月南座『時雨の炬燵(しぐれのこたつ)』の倅(せがれ)勘太郎で渡辺芳彦の名で初舞台。90年国立劇場第10期歌舞伎俳優研修修了。91年1月伯父の五代目中村富十郎門下となり、中村芳彦を名のる。93年4月富十郎の部屋子となる。2001年11月歌舞伎座にて『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』の禿(かむろ)で二代目中村亀鶴を襲名。09年11月より四代目坂田藤十郎一門となる。
受賞
▼1990年11月『国性爺合戦』の下官で国立劇場奨励賞。1999年6月「歌舞伎のみかた」の解説で国立劇場特別賞。2000年第六回日本俳優協会賞奨励賞。01年10月『天下茶屋聚(てんがちゃやむら)』の才造亀吉で、10年12月『仮名手本忠臣蔵』の鷺坂伴内で国立劇場奨励賞。09年7月「歌舞伎のみかた」の解説と『矢の根』の曽我十郎で、同年11月『傾城反魂香』の土佐修理之助と『大津絵道成寺』の弁慶で、15年10月『伊勢音頭恋寝刃』の奴林平で、18年10月『平家女護島』の瀬尾太郎兼康で国立劇場優秀賞。12年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。