松本 錦吾 (3代目) マツモト キンゴ
- 屋号
- 高麗屋
- 定紋
- 四ツ花菱
- 所属
- 伝統歌舞伎保存会会員
プロフィール
▼立役。確かな演技力で、いぶし銀の存在感を放つベテランの脇役。初代松本白鸚の内弟子として修業を積んだ高麗屋一門の古参俳優。熟練の演技で舞台に安定感をもたらしてくれる貴重な存在である。時代物では、『仮名手本忠臣蔵』四段目・七段目の斧九太夫で、物語における立場を明確にしながらも、姑息で小心者らしい役柄を滑稽味をにじませ巧みに演じている。『勧進帳』の常陸坊でも最年長の従者らしく頼り甲斐のある四天王のひとりを好演。一方、世話物では、『魚屋宗五郎』の父太兵衛では気弱で善良な父親を、『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』の北村大膳では狡猾な奸臣ぶりを見せている。いずれの役でも、余人には換えがたい味わいのある俳優である。新作『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』では、船表賄方の次郎兵衛を好演していた。国立劇場歌舞伎俳優養成の講師も務めていた。
〔小野幸恵〕
経歴
芸歴
▼1942年4月12日生まれ。二代目松本錦吾の長男。49年2月大阪・歌舞伎座『吉田屋』の禿(かむろ)で松本忠を名のり初舞台。53年八代目松本幸四郎(初代白鸚)の内弟子となり、松本錦彌を名のる。65年名題昇進。同年2月東京宝塚劇場『鬼の少将夜長話』の家従・弘之で三代目松本錦吾を襲名。88年幹部昇進。
受賞
▼1972年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。78年8月歌舞伎会公演『勢獅子』の鳶頭竹吉などで国立劇場努力賞。同年11月『元禄忠臣蔵』の岡島八十右衛門などで、80年6月『極付幡随長兵衛』の舞台番新吉などで、98年11月『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の大江鬼貫で国立劇場奨励賞。88年関西で歌舞伎を育てる会奨励賞。97年眞山青果賞奨励賞。99年4月『十六夜清心』の西心で、2010年12月『仮名手本忠臣蔵』四段目と七段目の斧九太夫で国立劇場優秀賞。20年文化庁長官表彰。