部屋子、芸養子、御曹司

歌舞伎俳優の略歴などに「○○の部屋子(へやご)となる」という記事があることがあります。

「部屋子」とは、歌舞伎の場合、子役の時分から幹部俳優の楽屋にあずけられ、鏡台を並べて楽屋での行儀から舞台での芸など、役者として必要なことを仕込まれる立場をいいます。いわば幹部候補生として英才教育を受けるわけですから、まだ名題資格を取得していなくとも、名題と同格の扱いをうけることになります。 いわゆる「御曹司」は有力な俳優の子弟のことですが、部屋子というのは御曹司に限らず、素人の子弟でも見込みがあって芸養子にする場合や、有力な俳優の子弟でありながら何らかの理由で親以外の幹部俳優に預けられる場合なども含めた呼称だといえましょう。

このようなエリート育成システムは、歌舞伎に限らずさまざまな世界でみられるものです。歌舞伎ではこうした部屋子制度を維持する一方で、名題下から実力で大看板にまで昇りつめる道も確保しておくことで、たえず新しい血と才能を採り入れてきたのです。

ただし御曹司も部屋子も、成長して一人前の俳優になるには、やはり名題試験を受けて合格する必要があるので、その点はほかの名題下俳優とかわりません。