題名の表現

歌舞伎の演目には外題(げだい)と呼ばれる長い題名が付けられていますが、縁起の良い奇数にまとめられ5文字あるいは7文字が決まりとなっています。しかし実際の上演は長いお芝居のなかの一部(「見取り」といいます)であったり、また芝居の内容に即した親しみやすい通称で呼ばれることも多いので、本来の外題を「本外題」と呼ぶことがあります。実際かなり多くの演目に通称が付けられ、呼び名としてもその通称が専ら使われます。

最近の上演ポスターなどからもわかるように、『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) 熊谷陣屋』『近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた) 盛綱陣屋』『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ) 寺子屋』など、見取りで名場面が上演される場合は場名がメインに、そして本外題が右肩に小さく記載される例が多くなっています。また『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』を『白浪五人男』、『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』を『河内山』など、おなじみの主人公の名前を演目全体を表す通称として扱う例は昭和の頃にしばしばあるものの、昨今は少なくなりました。ですが、実際には今も圧倒的にこういった通称が観客にとってなじみ深いものとなっています。

また「歌舞伎十八番」は『勧進帳』『暫』『矢の根』『鳴神』『毛抜』などのように文字数が少ないですが、これらは通称というよりも、七代目市川團十郎が十八番を制定した時に列記した、いわば「テーマ」のようなもので、本来は古くから別の長い外題で上演されてきたものです。たとえば『鳴神』と『毛抜』は元々『雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)』という演目のなかの一場面を、別々に取り出してそれぞれ単独で上演する形になったものです。